モーションウィジット

2026年1月29日木曜日

【旅行】390円で辿る「知の深淵」。民具の壊れ方の美学と、維新の原動力『大日本史』の圧倒的重圧感

【この記事のポイント】
・旅の締めくくりに訪れたのは、『茨城県立歴史館』。江戸時代の旅日記から、民具の「壊れ方」という独自の視点、そして水戸藩が情熱を注いだ『大日本史』の圧倒的な重圧感などを実感。


今回の旅の最終目的地は、茨城県立歴史館。
入場料は企画展開催中のため390円、特別展なら690円、これらの合間なら180円と、コンテンツの質に対して非常に柔軟かつ合理的な価格設定です。

私たちが訪れた際は、「旅」をテーマにした非常に興味深い展示が行われていました。

時空を超えるトラベルガイド:江戸時代の「ツーリズム」





企画展「博物館でツーリズム!! ー江戸時代の旅日記をたどるー」は、「アナログ時代の移動ログ」の集大成っていう感じ。

江戸時代、寺社参詣や湯治などの大衆的な旅が一般化。
展示では旅日記を中心に、当時の旅行案内書や地誌、絵図を幅広く収集し、人々の移動の軌跡を多角的に紹介していました。

昔の地図は非常に細かく書かれていて、街道筋を追っていると時間が経過するのを忘れてしまいますね。

「群」としてのデータと、終焉の美学:民具の哲学





同時開催の「モノ×語り ー民具はがらくたか?―」という展示、これがなかなかユニーク。

民具が大量に保存されるのは、地域や時代ごとの微細なバリエーションを比較分析するための「母集団」が必要だから。
つまり個別の「一点もの」としての価値ではなく、共通性や違いを明らかにするためなんだとか。

モノそのもの以上に、その背景にある「人々の暮らしの変遷」を読み解くための重要な資料なんだそうです。



さらに衝撃的だったのは、「民具の壊れ方」というセクション。

民具は使われることで摩耗し、あるいは経年劣化し、災害に遭い、時には「使われないこと」で壊れていく。
モノの誕生から死、そして「転生」に至るまでのライフサイクルを、破損という現象を通して丁寧に追跡しているという感じでした。



実際に壊れた民具の数々を見ていると、道具としての天寿を全うした彼らに、一抹の寂しさと敬意を感じます。

地震で無惨に割れた壺も、鼻緒が切れて役目を終えた下駄も、どこか誇らしげな「戦死」の趣。
「形あるものはいつか壊れる」という真理を、これほどまでに饒舌に語りかけてくる展示も珍しいんじゃないでしょうか。

伝説の巨人と、撮影制限という「情報の壁」





会場を歩いていると、突如として筑波山に腰掛ける「ダイダラボッチ」が登場。

日本各地に伝わる国造りの巨人・ダイダラボッチですが、茨城では千波湖を作ったり筑波山を運んだりしたという伝説が残っています。

『常陸国風土記』にもそれらしき巨人の記述があり、古代人がこの雄大な地形をどう解釈したかを物語る興味深い存在。
スケールの大きさは、まさに「大自然の化身」としての圧倒的な存在感を放っています。



館内の展示は非常に充実しているんですけど、残念だったのが撮影制限の厳しさ。
貴重な資料の保護は理解できるものの、解説パネルまでもが撮影禁止で、情報の持ち帰りが困難なんですよね。

パネル撮影に制限がかかっている施設は珍しく、情報の拡散よりも「現地での体験」に重きを置くストイックな運営方針なんでしょうかね。

坂東武者の誇りと、水戸藩の巨大プロジェクト





おぉ、これは平将門なのか。

平将門は現在の坂東市付近を拠点に「新皇」を自称し、平安朝廷に公然と反旗を翻した坂東武者の英雄。
茨城の地は彼の革命の舞台であり、その勇猛果敢な精神は、後の地域のアイデンティティ形成に大きな影響を与えています。

今なお県内各地には将門伝説が残っているそうで、彼がいかに民衆から支持されていたかを静かに語り継いでいます。



そして、私が今回の訪問で最も圧倒されたのが、水戸藩の金字塔『大日本史』。

徳川光圀が編纂を開始したこの巨大な歴史書は、全397巻に及び漢文で綴られているんだそう。
皇室の正統性を中心に据えた「水戸学」の根幹となり、完成までには実に約250年という驚異的な時間を要したんだとか。

これが幕末の志士たちに火をつけ、明治維新の原動力となったのは、歴史のバタフライエフェクトと言えそうです。



最後に、水戸藩の悲劇的な結末を象徴する「天狗党の乱」について。
幕末、水戸藩の過激攘夷派・天狗党が一橋慶喜(後の15代将軍)を通じて朝廷に尊王攘夷に直訴すべく、京都を目指した無謀な進軍劇です。

厳冬の峠を越えて敦賀に達したものの、最終的には降伏し、350名以上が処刑されるという凄惨な結末に。
この内紛による人材の喪失が、維新の中心にいたはずの水戸藩が新政府から取り残される一因となったんですよね。

気づけば、390円という投資に対して、あまりに膨大な情報のインプットを受けた1時間弱でした。

納豆グルメに始まり、御岩神社や袋田の滝、そして茨城の歴史の深層に触れた今回の新春旅行。
この知的な充足感を携えて、2026年の日常へと戻ることにしましょう。

旅の連載もこれにて完結。
明日からは、またITやグルメ、日常のウォーキングといった通常運転の記事に戻りますので、どうぞよろしくお願いします。




茨城県立歴史館
茨城県水戸市緑町2‐1-15
029-225-4425
営業時間: 9:30 ~ 17:00(入館は16:30まで)
休館日: 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、年末年始

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