・母の熱烈なリクエストで今年も敢行したのは、年に一度のローストビーフ作り。低温調理と自家製レモンジャムソースが織りなす、正月の食卓を彩る至福の味わい。
昨日の記事でも触れましたけど、我が家の新年会には欠かせない恒例行事は、私が自作して持参するローストビーフ。
とはいえ、年に一度しか作らない素人料理。
火の通り加減には毎年確固たる自信が持てないし、今年は毛蟹も鰹の藁焼きもあるし。
ローストビーフは休んでもいいかな…
なんて考えて、先日書いた先日書いた銀座『南風楼』での食事の際、母に相談してみようとしたんです。
「あのさ、お正月のローストビーフなんだけど…」
「あぁ、ローストビーフ! 今年も楽しみにしてるわね、よろしく!」
こちらの「止めようかな」という言葉を飲み込ませる、見事な先制攻撃。
こうなれば、作るしかないですね。
格付けの真実:なぜ「5等級」を選んだのか
肉の調達は、船橋インター近くの『生鮮市場TOP』へ。
最近の私のお気に入りで、肉や魚の鮮度と種類の豊富さなかなかのものです。
そこで手にしたのは「5等級」の和牛。
よく聞く「A5」との違い、皆さんご存知でしょうか。
調べてみると、意外な事実が分かります。
まず「A」の部分は「歩留まり等級」。
一頭の牛からどれだけ多くの肉が取れるかという生産効率の指標であり、実は味とは直接関係ないんです。
重要なのは数字の「5」で、これは霜降りの度合いや肉の光沢、締まり、脂肪の質といった「見た目」の評価なんですよね。
個人的には霜降りが強すぎるのは苦手なので、本来なら4等級や3等級の赤身らしさ選びたいところ。
でもまぁお正月だし、家族に最高級の和牛を味わってほしいという思いで5等級をカゴに入れたという次第でした。
緻密な温度管理:ガスオーブンとの対話
調理はガスオーブンを使い、120℃の低温で60分。
肉の形や厚みは個体差があるもので、焼き上がりに中心温度を計測してみると、60℃強でした。
「あ、少し高すぎたか……」
レアを狙うなら55℃前後が理想なんです。
すぐにアルミ箔で包んで肉汁を落ち着かせ、熱が引いてから一晩冷蔵庫で寝かせてと。
こうすることで、繊維が締まりカットしやすくなるんです。
至福の試食:和牛が放つ圧倒的な存在感
翌朝、恐る恐るナイフを入れてみると…
おぉ、断面は綺麗なピンク色。
ウェルダンになっているんじゃないかと心配していたものの、見事なミディアムに仕上がっていました。
さてと。
先日ご紹介した自家製レモンジャムを隠し味に、赤ワインとバルサミコ酢を煮詰めた特製ソースをかけて試食です。
1枚をペロッと口に運ぶと…
うんうん、和牛のローストビーフだ(←当たり前)
舌の上で体温とともに解ける上質な脂の甘み、これが和牛の真髄。
低温調理で閉じ込められた肉汁が溢れ出し、赤身の濃い旨味とも均衡している。
自家製レモンジャムのソース、脂の重みを華やかな酸味で上品に昇華させる名脇役。
シルクのような滑らかな舌触りの後に、芳醇な牛肉の香りが鼻腔を抜けるていきます。
まさにハレの日にふさわしい、仕上がりかなと自画自賛。
最後に:おもてなしにも一苦労
翌日の新年会本番では、この塊をひたすら薄くカットして大皿に並べます。
これが意外に重労働。
30回、40回と包丁を動かしていると、手首に乳酸が溜まってくるものなんです。
たまに切り損ねて厚くなってしまった破片は、調理担当の特権としてその場でつまみ食いの餌食に。
これがまた、なんとも言えない楽しみだったり。
苦労して並べた皿、皆の「美味しい!」という声とともにあっという間に空になっていく。
その光景を見ていると、来年もまたローストビーフを作ろうと思うものです。
今年の年末もまた、『生鮮市場TOP』に行くことになるんでしょうね。
【おまけのワンポイント】
・牛肉のタンパク質は68℃を超えると急激に収縮して水分(肉汁)を放出してしまうため、プロは55℃〜62℃の範囲を厳密にコントロールするんだそう。こうした「温度の科学」を理解すると、料理は再現性の高いものになるんですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿