・国立科学博物館の特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」を家族と見学。終盤の週末で大混雑でしたが、旧石器から古墳時代までの展示を巡り、古代DNAが明かす日本人のルーツと新たな知見に触れました。
6月15日(日)で終了してしまった、国立科学博物館の特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」。
終盤の週末、両親と息子とともにこの興味深い展示を見に行った時の様子を振り返ります。
上野公園での待ち合わせは午前10時。日差しが強く、この時期らしい暑さを感じながら、国立科学博物館の入口に到着。
「2,100円という入館料だし、終盤の土曜日午前ならさすがにそこまで混んでいないだろう」。
そんな甘い予想は、すぐに裏切られることになります。
入口こそ比較的スムーズに入れましたが、展示会場へと進むにつれてその予想が大間違いだったことに気づくことに。
人波をかき分け、古代人との対面
会場に入ると、まずは日本列島における人類史の黎明期、旧石器時代からの展示がスタート。
旧石器時代の人骨と、そこからDNA情報などを基に復元された頭部模型。
まるで生きているかのようなリアルな頭部。
人骨と共に展示されている様はオカルトチックな雰囲気も漂うものの、それ以上に数万年の時を経て私たちの祖先かもしれない人々と対面しているという事実に静かな感動を覚えます。
しかし、そんな感慨に浸るのも束の間。
会場内は、本当に多くのお客さんで賑わっています。
人気の展示の前では人垣ができ、展示をゆっくり順路通りに観ていくのは大変な状況。
こういう時は焦らず、比較的空いている場所から見ていくのが賢明な策。
人波を縫うように移動しながら、展示を追っていきます。
DNA解析が示す縄文人の意外な暮らし
時代は縄文へ。素朴ながら力強い造形の土器や土偶と共に、当時の人々の暮らしが紹介されています。
興味深かったのは、合葬されている人骨をDNA分析した結果に関する解説。
血縁関係がない複数の人骨が一緒に埋葬されているケースがあることが分かり、そこから再婚や養子縁組といった、血縁だけではない家族の再構築が縄文時代から行われていた可能性が示唆されているとのこと。
遥か古代の人々が、現代と同じように様々な形で家族を築いていたかもしれないという事実に驚き。
縄文時代の人物表現といえば土偶が有名ですけど、壺などに描かれた人物の表現もまた個性的で魅力的。
シンプルながら、その中に彼らの感性や世界観が込められているのを感じます。
この独特の芸術性、私の好みにすっぽりとハマるんですよね。
弥生時代へ、農耕と社会の変化
縄文時代が終わり、弥生時代へと移ります。日本列島に稲作が伝来し、人々の暮らしが大きく変わった時代です。
ここで衝撃的な解説に出会いました。
西日本でコメやアワ、キビといった穀物が栽培され始めたのは、なんと縄文晩期末だったというのです。
「弥生時代の特徴は稲作」と習ってきた身としては、「え、弥生時代の始まりが稲作伝来じゃないの?」と軽い混乱を覚えるほど。
「とはいえ、縄文人は穀物を主な食料源とはしていなかった。これが穀物を積極的に栽培し、食料の基盤とした弥生人との大きな違いだ」という一文に納得。
農耕技術の伝来と、それを社会の基盤としたかどうかが時代を分ける大きな境界線なんだなと。
弥生時代になると、土地や収穫物を巡る争いが増加。
戦闘による死者が出土するようになるのも、土地に固執するようになった弥生時代からの特徴。
それにしても人が多い。
こういった展示をじっくり見るのが難しかったのは、少し残念。
弥生人の復元模型も展示されています。
現代の日本人にも通じるような、親しみやすい顔立ち。
周囲でも,「こんな人、街中にいそうだよなぁ」と口々に言っていました。
遺伝的にも現代日本人と近い要素が多いという古代DNA解析の結果を知ると、この感覚はあながち間違いではないようです。
古墳時代、そしてDNAが解き明かす親族関係
弥生時代を経て、古墳時代へと舞台は移ります。大規模な古墳が築かれ、社会の階層分化が進んだ時代。
古墳といっても様々な形がある。
前方後円墳は有名ですけど、円墳や方墳に加えて前方後方墳という分類もあるのかと。
古墳の数も膨大で、この時代にどれだけ社会の階層化が進んだのかが分かります。
古墳時代を象徴する遺物の埴輪。
馬や人物、家など、様々な形があり、当時の人々の暮らしや考えを知る手がかりとなります。
「土偶は縄文時代だけど、埴輪は弥生時代じゃない(古墳時代)」という話を母に伝えると、母も少し驚いた様子。
私と同様に誤解していたようです。
土器の分類と、土性人形(土偶や埴輪)の発展過程は、確かに別々に考えるべきなんですよね。
埴輪もまた、現代の目で見ても芸術性が高い造形物だと感じます。
そして、特別展のハイライトの一つ、古代DNA研究の最先端を示す展示。
ゲノム解析によって、古墳時代の親族関係が分かるようになったというのがこれです。
岡山県の古墳で発掘された父親と娘2人の頭骨を分析したところ、娘たちは異母姉妹だったことが判明しているんだそう。
現代であれば珍しいことではないものの、当時の社会構造やDNAから読み取れる親族関係は、これまでの考古学や歴史学だけでは知り得なかった新たな事実ですね。
解説によると、娘たちが異母姉妹である背景には、当時、女性が男性より寿命が短かったことによる再婚などの社会的な要因があったと推測されるとのこと。
現代とは逆の傾向だったという事実に、ここでも驚きと共に多くの学びがありました。
最後に
国立科学博物館の特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」、日本列島における人類史を考古学的な視点、そして最新の古代DNA解析という科学的な視点から、多角的に探求する非常に刺激的な展示でした。
混雑はしていたものの、旧石器時代から古墳時代まで、各時代の人骨や遺物、そしてDNAが明らかにした新たな知見に触れることができる。
これで私たちがどのようにして「日本人」へと繋がる道のりを歩んできたのかを、深く考える機会となったなと。
家族で訪れたこともあり、それぞれの時代の人々の暮らしや顔立ちについて話し合ったり、「これ知ってる?」「これ面白いね」と教え合ったりしながら見学できたのもよかったと感じています。
「古代DNAー日本人のきた道ー」、次回も続きます。
【おまけのワンポイント】
・「古代DNAー日本人のきた道ー」は、5/20の時点で入場者数10万人を突破していたんだそう。最終的な入場者数はまだ発表されていないものの、人気のある特別展だったようです。
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