・古梅園でのにぎり墨体験は、単に墨を握るだけでなく、日本の伝統文化に触れる貴重な機会。
・今回の体験を通して、墨一滴に込められた職人さんの思いや、日本の歴史を感じることができた。
古梅園でのにぎり墨体験、昨日は煤と膠を混ぜ合わせるところまで書きました。
墨造りの工程はこの後に型に入れることになるので、にぎり墨を体験するのはこのタイミング。
墨を練っている職人さんから手渡された墨の原料をギュッと握る、これがにぎり墨。
熱いんじゃないかという心配は御無用、常温で少々重みがある延べ棒を人差し指以降の4本でギュッと握り、最後に親指で掌に押し込んでお終い。
あっけないほど短時間で終わってしまうものの、こんな体験をできる機会はなかなかないですよね。
握った墨は、乾燥工程を経て家に送ってくれるとのこと。
楽しみに待つとしましょう。
乾燥工程といっても、そんなに単純なものじゃない。
- まずは灰乾燥という工程があって、水分が多い灰から少ない灰に日々移しながら乾燥させていく。大きい墨だと1ヶ月以上かけて、小さいものでも1週間ほどかけて、毎日隣の箱の段へと移していくという作業を行っている。
- 一箱には200本(だったと思います)の墨が入っていて、新聞紙・灰・墨・灰・新聞紙・灰・墨…と階層化されているが、これを毎日隣の箱に移す作業は芸術的な速さ。
- 必要な新聞紙の量も半端ではないが、これは販売店に取り置いてもらっている。原紙を使っても問題はないのだが、実は印刷された後の方がコストが安いというのは、廃棄するしか後の用途がないから。
いきなり自然乾燥させると、水分が急に抜けるので墨が割れてしまうそう。
なのでこんなに手間のかかることが必要なんだそうですけど、いや〜、凄いな。
灰乾燥が終わると水分の7割が取り除かれ、ようやく自然乾燥の工程に。
- 墨に跡が残らないよう藁は支える程度にしか結ばれておらず、微妙なバランスで吊るされている。
- この状態で1ヶ月〜半年かけて自然乾燥させるが、近付いてうっかり落としてしまおうものなら、職人さんにこっぴどく怒られる。
古梅園の製法は昔と変わらないのだそうですけど、こんなに長期間をかけて作られているものとは驚き。
最後に、原材料について解説してくれるコーナーがここ。
膠の匂いを嗅がせてくれたり、型に触らせてくれたりなんですけど、型についての話がまた凄い。
- 墨が型から綺麗に離れてくれる木材は梨の原種だが、木がほとんどないのでなかなか手に入らない。ある時、XX(地名を失念)で大量に採れたという連絡を受けて、数百年分を入手してストックしている。
こういう意思決定があるのは、室町時代末期から続く古梅園だからこそなんでしょう。
古梅園の見学、無茶苦茶面白かった。
にぎり墨体験はごく一部、古梅園の歴史や理念に触れるというのがこの体験のいいところ。
まだ今回の旅行は始まったばかりで、いきなりこんなに興味深いものに出会えるとは思わなかったです。
【おまけのワンポイント】
・ガイドの方が仰ってましたけど、日本の教育では書道はただ墨と筆で文字を書くことを教えるのみ。文化や歴史についてもしっかりと教えるべき、というご意見は、今回の経験を通じてよく理解できました。