【この記事のポイント】
・新幹線を降りて常磐線に乗ったはずが、まさかの東北本線へ。ローカル線の気まぐれなダイヤと、思わぬ小ハプニングから始まる親子旅の愉快なプロローグ。
・車内で出会った懐かしい「アナログな整理券」が教えてくれる旅の豊かな余白。そして、駅前で出迎えてくれたレンタサイクル「ワチャリ」のネーミングへの深い共感。
新幹線で到着したのは仙台、でも目的地は仙台じゃないんです。
「亘理」という地名をご存知でしょうか。
これ、「わたり」と読むんですよね。
宮城県の南東部、阿武隈川の河口と太平洋に抱かれた町。
「はらこ飯発祥の地」という、五感を刺激してやまない響きに誘われたわけですけど、あいにく今は新緑の五月。
名物の鮭とイクラに出会うには、ちょうど半年ほどズレているんですよね。
でも、亘理は豊穣な太平洋を目の前にした海の町。
鮭と時期はズレていても、初夏の胃袋を歓喜させてくれる海の幸が手ぐすね引いて待っているはず。
そんな何とも都合のいい楽観(というか、単なる食い意地)が、がぜん頭をもたげてくるわけです。
仙台から亘理へと向かう足は、ローカル線の常磐線。
予定していた9時34分発の電車に乗ったつもりで、心地よくシートに腰を下ろしていたところ…
あれ、出発の9分前、9時25分に静かに扉が閉まったぞ。
車内放送に耳を澄ますと…
え、これ、常磐線ではなく「東北本線」の白石行きだって?
こりゃ、ちょっとマズいかな。
常磐線は1時間に1本程度しか走っていないので、一本乗り遅れるだけで、旅のスケジュールが変わってしまうんです。
ここで路線図を確認、終点の「白石」は…
あ、これはラッキー!
「岩沼」までは常磐線と線路を共有して走るため、そこで降りて常磐線を待てばいいだけのことでした。
最小限の軌道修正で切り抜けられたので、こんなハプニングも旅のいい調味料。
乗り換え駅である「岩沼」でも、小さなハプニングが我々親子を待ち受けていました。
のどかなホームで常磐線を待ちながら、息子とおしゃべりをしている時のこと。
ふと気づけば、あれ?
9時57分の発車時刻を過ぎており、時計は9時59分。
あれれ?
車両編成が短くて、我々の立っていた位置まで届かなかったんだろうか。
それともおしゃべりに夢中になっている間に、電車は音もなく通り過ぎて行ってしまったんですかね。
冷や汗を流しながらホームの掲示板を見上げると、そこには無情にも「原ノ町 10:58」の文字。
う〜ん、東北本線に続いてのミスか…
息子は実に切り替えが早く、「よし、亘理まで歩こう。7キロくらいだから1時間ちょっとだね。」と。
まぁそれでもいいんだけど… そうだ!
冷静にスマホを取り出して、ヤフーの運行情報を確認。
お〜、な〜んだ。
常磐線は単に「10分遅れ」で運転しているだけじゃないですか。
駅員さんも掲示板の表示の誤りに気づいたようで、いつのまにやら「原ノ町 9:57」と正しい表示に戻っていました。
そんなこんなの、ささやかなハプニングの末にようやく乗れた常磐線。
車内に「整理券をおとり下さい」と書かれた、懐かしいアナログな金属箱が鎮座しています。
…あれ、これ、どうやって使うんだっけ?
そうそう、乗車時にこの箱から整理券を引き抜き、そこに印字された番号を覚える。
そして列車の前方に掲げられた運賃表と番号を照らし合わせ、降車時に運転士の横にある運賃箱に現金と一緒に投入する、という仕組みだったかな。
Suicaのタッチ決済に慣れきってしまった現代社会、この「整理券方式」の作法を淀みなくこなせる大人は、今やどれくらい残っているんでしょう。
スマホをかざすだけの効率的な移動に対して、小銭を握りしめて運賃箱を覗き込むこのアナログさは愛おしく感じられたりもします。
いや、ちょっと待て、ここは現役の路線。
Suicaと、大先輩であるアナログな整理券箱が同じ車内に同居している。
新旧の技術が自然に並ぶ姿は、なんだかタイムトラベルをしたような不思議な愛おしさがありますね。
紆余曲折を経て、ようやく亘理駅に到着。
ここで我々が目指すのは、駅前のレンタサイクルです。
その名は「ワチャリ」。
「わたり」と「チャリ」をかけ合わせた、凄まじいオヤジギャグ系のネーミングです。
しかし、その身も蓋もない直球さに、思わず「実に見事な命名だ」と深く感心してしまう。
これは私自身がオヤジそのものだからなんでしょう。
長くなってきたので、今日のアナログな鉄道旅はこのあたり(あちゃり)にしておきましょう。
【おまけのワンポイント】
地方のローカル線やワンマン列車では、ICカードが使えず整理券と現金が必要な区間が今でもあるんだそう。あらかじめ千円札や小銭を財布に忘れずに用意しておきたいものですね。



