・人間ドック明けの至福のひととき、息子からの「ふぐの子粕漬」と常陸太田の日本酒「松盛」を堪能。猛毒のふぐの卵巣を無毒化する先人の知恵に感心しつつ、プリン体の影と葛藤する夜。
人間ドックが終わったらと、密かに楽しみにしていたことが一つ。
それは正月に息子から貰った「ふぐの子粕漬」をアテに、常陸太田で買ってきた日本酒を味わうというもの。
一緒に貰ってきた「ふぐ糠漬け」は、カラスミとヘシコをミックスしたような味わいだったんですよね。
対して「ふぐの子粕漬」はどんなだろうか。
猛毒を絶品珍味に変える先人の知恵と、酒粕の魔法
これはふぐの身ではなく子、つまり卵巣。
本来は猛毒を含む部位を、長期間の塩と発酵の力で無毒化するという、先人の執念が詰まった奇跡の食材です。
そして糠漬けと粕漬け、これらは一体何が違うのか。
糠漬けは米糠の乳酸発酵による強い旨味と塩気が特徴で、野趣あふれる味わい。
対して粕漬けは、酒粕の甘みや芳醇な香りが加わり、カドが取れてマイルドになる傾向があるんだそうです。
発酵という自然の作用が、食材のポテンシャルを最大限に引き出す。
同じ素材でも漬け床を変えるだけで全く別のアウトプットになるのが面白いですね。
よし、それではまず一人乾杯!
澄んだ水のような「松盛」と、禁断の珍味のペアリング
グラスに注いだ「松盛」。
口に含むと優しく広がり、きめ細やかな旨味が感じられます。
本醸造らしいすっきりとした後味がありつつ、追いかける旨味で飲み飽きしない爽快さ。
時間が経つとさらにまろやかに変化し、まるで澄んだ水のようなピュアな口当たりに変化します。
魚料理から肉料理まで、幅広い料理とペアリングしやすい懐の深い味わい。
常陸太田の岡部合名会社が醸す、食中酒としての完成度の高さに思わず唸ります。
ふぐの子をほんの少し箸でつまみ、口の中へ。
おぉ。
プチプチとした魚卵の食感とともに、酒粕の華やかな香りと濃厚な旨味が爆発しますね。
糠漬けよりも塩気がまろやかで、奥深い甘みが後を引く絶妙なバランス。
そしてすかさず「松盛」を流し込む。
澄んだ酒が口の中の濃厚さをすっと洗い流し、次の一口を誘う。まさに無限ループの完成です。
これは日本酒好きを骨抜きにする「禁断の果実」ならぬ「禁断の魚卵」。
あまりの美味しさに手が止まりませんけど、ふと頭をよぎるのは「プリン体」の三文字です。
検査結果が出る前だというのに、自ら数値を上げに行くような背徳感…
「今日は特別」と自分に言い聞かせつつ、小皿のふぐの子を慈しむように味わいました。
これは日本酒好きを骨抜きにする、禁断の果実のような珍味。
あまりの美味しさに手が止まらなくなる、至福の晩酌タイムですねぇ…
美味しいので手が止まらなくなるんですけど、深酒はよろしくない。
ここはじっと我慢して、数日に分けて愉しむことにしましょう。
イカの肝という新たな刺客に、太っ腹な気分で感謝
とはいえ、日本酒はあと1杯だけ呑みたいぞと。
アテを角上魚類のイカ沖漬けの下足と肝に切り替えよう。
ねっとりとした肝の濃厚なコクと、下足のコリコリとした食感のコントラスト。
醤油ベースの甘辛いタレがイカの旨味を底上げし、磯の香りが鼻腔を抜けていきます。
「松盛」を合わせると、イカのクセを綺麗に包み込み、旨味だけを増幅。
ふぐの子とはまた違う、ストレートな海の旨味に完全降伏です。
一杯だけと決めていたのに、グラスが空になるスピードが加速していってしまうのはやはり危険な食材でしょう。
え? イカの肝もプリン体が多いんじゃないかって?
知ってはいるものの、まぁたまにはいいじゃないですか。
人間ドックも無事に終わったことだし、細かいデータ(数値)は気にしない。
そんな心も身体も太っ腹な気分にさせてくれた美味しい食材たちに感謝です。
いやぁ美味しかった、ご馳走さまでした。
【おまけのワンポイント】
・前にも書きましたけど、ふぐの卵巣の毒抜きは、石川県の特定の地域でのみ許可されている伝統製法。塩漬け1年、糠・粕漬けで2〜3年という気の遠くなるような時間をかけ、微生物の働きで毒を分解するという、まさに奇跡の発酵食品なんです。