【この記事のポイント】
・下総中山駅構内の『いろり庵きらく』で定番の「かき揚げ天玉そば」を選択
・新宿『かめや』が元祖とされる天玉そばの歴史に思いを馳せる
・注文後に茹で上げる生麺と大盛りのボリュームが生む、午後の仕事への深い充足感
午後から出社となる、とある日。
下総中山駅に降り立ったところで、さて、午後の仕事の前に軽く腹ごしらえをしておきましょうか。
お腹の「空き容量」は、それほど逼迫しているわけでもない。
しかし、立ち食い蕎麦という「無駄のない選択」なら、満足度とのバランスを考えると、ちょうど良い塩梅です。
そこでふらりと立ち寄ったのは、改札外に店を構える『いろり庵きらく』。
JRを利用する方なら、どこでも見かけるお馴染みの看板ですね。

券売機の前で、少しばかり思案。
目の前に大量の選択肢が並ぶと、なぜか思考の処理能力が著しく低下するのが私の性分なのです。
よし、今日はこれにしよう。直感で指が向かったのは、「かき揚げ天玉そば」のボタン。
「天玉」という組み合わせ。それは、立ち食いそば界における一つの完成された設計とも言える安心感があります。
目の前の情報量に少し圧倒されていた私にとって、この王道の選択こそが、今日の「最適解」と言えるでしょう。
注文した蕎麦を待つ間にふと気になり、スマホで調べてみると、天玉そばの元祖は新宿の『かめや』なのだとか。
1971年の創業だそうで、私もちょうどその頃は小学生。
半世紀近くも人の心を掴み続けているスタイルなのだなと、しみじみと感慨にふけります。

今回は、自分へのささやかな贅沢として「大盛り(+120円)」を選択。
さらに上の「特盛(+200円)」という誘惑もありましたが、午後の会議で心地よい満腹感に負けて居眠りでもしたら一大事。
控えめに0.5玉アップに留めるのが、大人の自制心というものです。
まぁ、本当のところは、単に特盛を完食するだけの自信がなかっただけ、という説も濃厚なんですけどね。
食券を買ったらカウンターに行く必要はなく、席を確保して待っていれば番号で呼んでもらえる。
この合理的なオーダーの流れは、いつ導入されたものだったか。
かつてのようなアナログなやり取りがなくなった寂しさはあるものの、限られたランチタイムの混雑を捌くには非常に理にかなっています。

おぉ、きたきた。
カウンターに置かれた丼は、大盛り用ということもあってなかなかの迫力です。

ん? かき揚げが少し小さく見えるだろうか……。
いやいや、よく見てみると、これがかなりの厚みを持っています。
丼の大きさが生んだ、視覚的なマジック。
実物を箸で探ってみれば、その存在感は十分すぎるほどです。

よし、それでは頂きましょう。
まずはつゆを一口。
色の濃さに反して味は角が立っておらず、出汁の香りがふわりと立って意外なほど美味。
続けてズズッと蕎麦を啜り上げます。
生蕎麦を売りにしているだけあり、完成度はなかなかのもの。
昔ながらの駅そばほど極端ではなく、かといって蕎麦屋ほど本格を気取らない。
この絶妙な「バランス」こそが、チェーン店としての正解なんでしょう。
衣がじんわりとつゆを吸い、少しずつ溶け出していく。
この油が甘めのつゆに混ざり合うコク深い味わいは、何度体験してもたまらない。
立ち食いそばならではの、衒いのない素直な美味しさです。
ところで、皆さんは玉子をどのタイミングで崩されますか?
最初から全体に絡めるのも一興ですけど、私は少し後の方まで温存しておきたい派。
蕎麦を半分ほど食べ進めたところで、満を持して箸を突き立てます。
おぉ、中からとろりと濃厚な黄身が溢れ出す。

これを蕎麦にたっぷりと絡めて、一気に啜る。
多層的な味わいが口の中に広がるこの瞬間、やはり格別ですね。
七味と絡めると味がピリッと引き締まり、最後まで飽きることなく楽しめます。
無心で食べ進め、気付けば完食。
このお値段でこの品質。
チェーン店という「効率の塊」が生む利便性を侮ることはできないなと。
身近で利用できるありがたい存在に感謝しつつ、ご馳走さまでした。
【おまけのワンポイント】
・いろり庵きらくでは、茹でたての生蕎麦と、店内で揚げるかき揚げに格別のこだわりを持っているそうです。「駅そば=茹で麺」という従来の常識を塗り替えたこのスタイルは、合理性と満足度を両立させたい現代人にこそ響くのでしょう。