・千葉の鉄道史と共に歩む老舗『万葉軒』で、時を越えて愛される駅弁を購入。房総の春を先取りする鶏そぼろと卵、そしてアサリが奏でる優しい三重奏を満喫。
とある休日、今日のランチはお弁当にしようかなと。
いつもであれば、多種多様な銘柄が揃う東京駅の『駅弁屋 祭』へ足を向けるところ。
ここでふと思ったのは、「千葉県の駅に、地域に根ざした独自の駅弁文化はないのだろうか」と。
成田山新勝寺への参拝客輸送や房総への観光需要など、千葉は古くから鉄道が重要なインフラとして機能してきた地。
であれば、語り継がれるべき名物駅弁が存在していてもおかしくないですよね。
ネットで調べてみると、真っ先に浮上したのが千葉駅の『万葉軒』。
昭和3年の創業以来、千葉の玄関口で旅人の胃袋を支え続けてきた名門中の名門なんだそうです。
今もなお健在と知り、さっそく千葉駅へと向かいました。
歴史を知れば景色が変わる:万葉軒との邂逅
千葉駅に降り立ち、目指す看板を探します。
「おぉ、あったぞ」。
これまで何度も通り過ぎていたはずの場所、これまでは全く気付かなかった。
背景にある歴史を知った途端、見慣れた景色の中から浮かび上がるように、その輪郭が鮮明に見えてくるから不思議なものです。
今回購入したのは、不動の二大看板。
千葉の県花を冠した「菜の花弁当(988円)」は、黄色い卵と鶏そぼろが織りなす春のカンバス。
対する「ジャンボカツ弁当(906円)」は、容器からはみ出さんばかりのカツが鎮座する、まさに質実剛健な一品です。
「妻が彩り豊かな菜の花を選び、私がガッツリとカツを喰らうことになるんだろう」。
そんな予測を立てたんですけど、意外や意外。
妻に選択権を委ねると、彼女はジャンボカツ弁当をチョイス。
私は自動的に菜の花弁当を担当することになりました。
春の色彩を食す:菜の花弁当の緻密な構成
さて、菜の花弁当と向き合ってと。
一面を覆う卵の黄色と鶏そぼろの茶色、そして鮮やかな緑のコントラスト。
その配置・配色は、房総の野山を俯瞰しているというイメージなんだでしょうかね。
よし、それでは頂くとしましょう。
まずはそぼろから一口、うん。
甘辛く煮上げられた鶏そぼろは、噛み締めるたびに肉の旨味が広がるしっかりとした食感。
対をなす卵はふんわりと穏やかな口当たりで、後から追いかけてくる甘いコクが絶妙。
甘辛いそぼろの「動」と、ふんわりした卵の「静」。
噛み締めるたびに、白米をベースにした豊かな旨味が展開されていきます。
そしてこのお弁当に「千葉」のアイデンティティを付与しているのが、県花である菜の花の漬物、そして生姜の風味が効いたアサリの佃煮です。
ほろ苦い菜の花が口内をリセットし、甘辛いアサリが咀嚼のリズムを一段と加速させる。
これら二品の脇役が、全体のバランスを整える見事な箸休めとして機能していました。
歴史ある駅弁には、単なる食事を超えた「旅の追体験」をさせる力があるもの。
豊かな休日ランチをもたらしてくれました。
美味しいお弁当に感謝、ご馳走さまでした。