モーションウィジット

2026年3月2日月曜日

【旅行】高さ7mのひな壇ピラミッドにびっくり!鈍行旅だから出会えた、1,631対の人形が放つ畏怖と情熱

【この記事のポイント】
・新幹線をあえて使わない「鈍行旅」が生んだ、鴻巣での奇跡的な寄り道。高さ7m31段、圧倒的スケールで迫る「びっくりひな祭り」のピラミッドを見物できるとは。


昨日の記事でお伝えした通り、息子の唐突な提案により始まった高崎一泊旅行。
まず考える要素は、交通手段の選択です。

朝からの出発であれば、迷わず新幹線を選択するんですけどね。
今から高崎に急いだところで、今日中に巡れるスポットは限定的。

高崎まで、新幹線なら約4,500円、対して在来線の鈍行なら2,000円程度。
わずか1時間弱の短縮に倍以上のコストを払うのはちょっと勿体ないなと。

よし、今日は上野東京ラインでのんびり行くことにしよう。

偶然という名の出会い:鴻巣のひな壇ピラミッド



大宮で高崎線に乗り換え、路線図で駅名を眺めていたところで…
あ、鴻巣を通るのか。

「この鴻巣って、確か凄い雛飾りをやるんだよ。」

ネットで調べてみると、なんと本日が「鴻巣びっくりひな祭り」の開幕初日じゃないですか。
「高崎に着いても大した用事ないし、寄っていってみようよ。」と息子。

なるほど、無計画旅行ならではの自由さ、加えて新幹線を使わなかったからできる芸当という訳ですね。
Googleマップで確認すると、駅前のしショッピングモール「エルミこうのす」が会場。
だったら時間もかからないし、寄っていくとしましょうか。



駅前広場では、「雛人形と花のまち こうのす」のモニュメント。

鴻巣の雛人形製作は、江戸時代中期にまで遡るもの。
当時、中山道の宿場町として栄えたこの地で、人形職人たちが独自の技術を磨き上げ、「鴻巣雛」として江戸の庶民の間で一世を風靡したのがその興りなんだそうです。

そして「エルミこうのす」中央の吹き抜けに足を踏み入れた瞬間、言葉を失います。



おぉ、眼の前には、巨大なひな壇ピラミッド。
遠目には個々の人形の識別が困難なほどの密集度、一つの巨大な「生命体」のような圧倒的なエネルギーを放っています。



傍らのモニターでは、設営の舞台裏を上映。
高さ7m、31段という規格外のピラミッドには、実に1,631体もの雛人形があるそうです。

開催期間中には、どうか地震が起こりませんように。
積み上げの労力を想うと、思わず祈りにも似た感情が湧き上がります。

職人の魂と、数多の視線が織りなす「畏怖」





まつりの源は、今なおこの地に息づく職人たちの情熱でしょう。
一体ごとに細部まで神経の行き届いた装束や表情は、量産品にはない「個」の重みを湛えています。

受け継がれてきた伝統工芸の粋、現代的なイベントに結実していることに感動しますね。



ピラミッドを間近から見上げると、その迫力は「畏怖」にと変化。
数千という無機質な表情が並ぶ光景は、人間に似た存在が過剰に密集することで生じる一種の不気味さ、「不気味の谷」に近い心理現象なんでしょう。



大人の畏怖なんてどこ吹く風、子どもたちは純粋にこの非日常を楽しんでいる様子。
顔ハメで屈託のない笑顔を見せる子どもたちを眺めていると、こちらの心理的緊張もふっと解けていきます。

他者の純粋な喜びの表情が、自分の中のポジティブな感情を誘発する「情動感染」。
人形たちの静かな視線に囲まれながら、生身の人間の笑顔に救われるというのも、また面白いものですね。

歴代のポスターが語る、祭りの変遷





コーナーの一角には歴代のポスターが展示され、この祭りの軌跡を物語っていました。

「鴻巣びっくりひな祭り」は、雛人形の街としてのアイデンティティを再定義すべく2005年からスタート。
当初は小規模な展示から始まり、回を重ねるごとに「高さ」と「数」の限界に挑戦、今や日本最大級のピラミッドひな壇として全国にその名を知られるまでになっています。

地域資源を現代的な驚きへと昇華させた、地方創生の成功例と言えるでしょう。

というところで、奇跡的な偶然が引き寄せてくれた、鴻巣での贅沢な時間。
新幹線をパスしたからこそ出会えたこの光景も、また一つの「縁」かな。

さて、そろそろ本来の目的地である高崎へ。
旅はまだ始まったばかりです。




【おまけのワンポイント】
・鴻巣が人形の街になった背景には、中山道の宿場町として人の往来が激しかったこと、そして荒川の良質な水と粘土が手に入りやすかったことが挙げられるんだとか。現代の私たちが鉄道で移動するように、かつての旅人たちもこの地で「鴻巣雛」をに買い、各地へ文化を運んでいったんでしょう。