【この記事のポイント】
・「チキン南蛮=タルタル」は延岡発祥、二大巨頭が火花を散らす「甘酢派」vs「タルタル派」の洋食思想闘争
・極限の現場サバイバル飯「冷や汁」と、樹の上で自然に落ちるのをじっと待つ「完熟マンゴー」の極端すぎる二面性
・炭火の煙をまとった「みやざき地頭鶏」が、大人の宮崎の夜をこれ以上ないほど熱く焦がす
定年退職後の夢である「日本全県制覇旅」の宮崎妄想シミュレーション、第3弾。
前回は、宮崎の地を這うような戦国「日向100年戦争」を巡り、美談の裏で島津軍がほぼ全滅しかけていた凄惨な現実に、足腰どころか背筋までゾクゾクさせられました。
過酷な旅路の後には、いつだって素晴らしい「食」が待っているもの。
お隣の鹿児島編では、黒豚しゃぶしゃぶから長期熟成の黒酢中華、そして火山地質が生み出した名水の山の幸に圧倒されました。
対する宮崎はといえば…
正直なところ、行く前は「チキン南蛮」と「マンゴー」くらいしか思い浮かばず。
そこで、今回も道中案内人のGeminiをちょっと意地悪に揺さぶってみることに。
「Gemini、鹿児島には一級の食材がゴロゴロしていたが、宮崎は失礼ながら『チキン南蛮』以外はスーパーのお惣菜コーナーで買えそうなラインナップばかりじゃない?」
この挑発を投げかけた瞬間、案内人の目の色が変わった?(ディスプレイはそのままでしたけど)。
「チキン南蛮をただのお惣菜と侮るなかれ」
「へへっ、旦那。チキン南蛮を小馬鹿にするとは、大いなる不敬。宮崎のチキン南蛮には、甘酢のみの『引き算の美学』と、濃厚タルタルの『足し算の狂気』という二大思想闘争が存在するのでございやす。」(Gemini)
聞けば、どちらも延岡市の洋食店『ロンドン』のまかない料理を共通のルーツに持ちながら、全く異なる発展を遂げたんだそう。
◆ 甘酢派(タルタルソースなし):延岡「直(なお)ちゃん」が誇る引き算の美学
・『ロンドン』で修業した後藤直氏が創業した延岡の「直ちゃん」。なんとここにはタルタルソースが一切かかっていないそう。
・サクサクの衣を纏った鶏むね肉を秘伝の甘酢タレに浸すだけ。衣の歯応えと爽やかな酸味、肉の旨味がダイレクトに伝わる原始の味付け。
「タルタルがないなんて」と驚きつつも、胃もたれが気になるお年頃の私には、そのサッパリ感が猛烈に魅力的に映ります。
◆ タルタル派(タルタルソースあり):宮崎「おぐら」が生んだ足し算の狂気
・一方、同じく修業を積んだ甲斐義光氏の「おぐら」が、我々の知るタルタルソース付きのスタイルを確立。
・スルメイカにマヨネーズをつける庶民的着想から生まれた自家製タルタルを、甘酢揚げ鶏の上にドカンと盛り付ける。
甘酸っぱさと濃厚なコクが暴力的ハーモニーを奏でる全国制覇の完成形。
なるほど、どちらが良い悪いではなく、二つの異なる洋食の流儀というわけです。
地頭鶏(じとっこ)炭火焼を包む「黒い煙」の科学
「そして旦那、夜の主役は『みやざき地頭鶏』の炭火焼でございやす。あの真っ黒さは焦げではなく、炭火の煙を纏わせる独特の燻煙技術なんでございやす。」(Gemini)
お〜、そういえば真っ黒な鶏、ありましたね。
強い火力の上で滴り落ちる良質な鶏脂が炭に触れて激しい煙を上げ、肉全体を包み込んで燻製のように焼き上げる。
人気店『ぐんけい本店 隠蔵』などで提供される炭火焼を一口食べれば、圧倒的な香ばしさとじゅわっと染み出す肉汁が弾けるんだそう。
あの黒さは旨さの勲章であり、ビールを無限に誘う悪魔のスパイスだったというわけです。
「冷や汁(実用)」と「完熟マンゴー(贅沢)」:宮崎に流れる両極端な時間の美学
さらに案内人は、宮崎の風土が育んだ二つの名物について語り始めます。
「旦那、宮崎グルメの真骨頂は、現場の『極限の実用精神』と、自然の『極限の待ちの美学』のギャップにございやす。」(Gemini)
一つは、過酷な暑さの農作業の合間に、塩分と水分と栄養を素早く胃袋へぶち込むために設計された「冷や汁」。
香ばしい味噌と魚出汁の冷たいスープを熱々麦飯にかける、一秒も無駄にしない泥臭い現場ファーストのスピード飯です。
一方、樹の上で熟して自然にポトリと落ちる瞬間までネットをかけてじっと待つ「完熟マンゴー」。
人間の都合を排し、大自然の時間の流れに全てを委ねることで、あの絹のような滑らかな食感と極上の糖度が生まれるんだそう。
『フルベジ』や『果物屋Cafeマルイ』のマンゴーパフェは、まさに待ちの美学が生んだ食べる芸術品なんだとか。
泥臭いサバイバル飯をかっこみ、落下の時間を贅沢に味わうパフェで締める。
この両極端なギャップこそ、陸の孤島が育んだガストロノミーの深みなのかもしれません。
「どうでございやす、旦那? お腹が減って申し訳なくなってきたでしょう?」(Gemini)
うん、参った。
妄想なのにこんなにお腹が空くなんて、案内人の口車に見事にはめられた気分。
「へへっ。では明日の最終章はいよいよ、どん底の『豊後落ち』から大逆転を果たした不屈の再興請負人、『伊東祐兵(すけたけ)』を我が社の中途採用面接にお呼びいたします。どうぞお楽しみに。」(Gemini)
よし、よだれを飲み込みつつ、次はいよいよ旅のクライマックス、偉人面接編へ。
宮崎の風土が育んだ最強のNo.2の採用ストーリー、しっかりと見届けるとしましょう。
【おまけのワンポイント】
宮崎を代表するチキン南蛮のルーツ「ロンドン」のまかない料理は、もともとは骨付きの鶏肉に小麦粉と卵液を絡めて揚げ、甘酢に漬けただけのシンプルなもの。
これに後藤直氏が「食べやすさ」を求めてむね肉の一枚肉をカットするスタイルを考案して「直ちゃん」へ繋がり、甲斐義光氏が「ボリュームと洋食としての華やかさ」を求めてタルタルソースをかけて「おぐら」へと昇華させたんだそうです。一つのまかない料理から、お客様に喜んでもらおうと模索した若き料理人たちの異なる創意工夫が、現在の宮崎の豊かな食卓を作っているんですね。

