【この記事のポイント】
・初めて体感する電動アシストの「魔法の力」への驚きと、のどかな田んぼ道で息子に置いていかれることで知る、切なくも頼もしい親子の距離感。
・川と海の壮大な押し問答の末に生まれた「鳥の海」の絶景。そして「新浜」からいつの間にやらワイルドに化けてしまった「荒浜」の地名に隠された歴史のいたずら。
前回の記事でご紹介した貸し自転車「ワチャリ」。
実は今回の旅における、最大のカギとなる存在だったんですよね。
というのは、これから目指す「鳥の海」は、亘理駅からおよそ6キロも離れているんです。
往復のタクシー代を節約し、その浮いた分をすべて「美味しいもの」へつぎ込む。
これぞ、限られた資源を最適に配分する、大人の旅のスマートな選択というものです。(←偉そうに言っていますけど、単なる食いしん坊の戯言)
さらに言えば、この日の宿も亘理駅から同じく6キロほどの距離に。
もし自転車がなければ、お隣の駅まで電車で移動し、そこからさらに3キロほど歩くことになります。
1時間に1本しかないローカル線のダイヤに神経を尖らせ、更に30分ほど歩く。
これと比べたら、電動自転車の力を借りて6キロを風のように走り抜けるのは、はるかにスマートで楽ちんですよね。
この「ワチャリ」を無事に相棒にできるかどうかで、旅のクオリティは天と地ほどに変わる。
事前に問い合わせたところ「先着順で予約は不可」とのことだったので、一刻も早く亘理に辿り着きたかったというわけです。
メールで問い合わせをした私の名前が窓口の担当の方に伝わっており、スムーズに貸し出していただけたことに深く感謝。
さっそくサドルにまたがり走り出してみると、その圧倒的な電動アシストの力強さに驚き。
軽くペダルを踏み込んだだけで、見えない誰かに背中をグイと優しく押されるような、実に不思議な浮遊感です。
普段私が乗っているのは、電動アシストのない普通の27インチチャリ。
これを一生懸命漕いでいても、重たい子供を前後に乗せたお母さんの電動自転車にあっさりと、涼しい顔で追い抜かれていく。
その理由がようやく身に染みて理解できました。
更に驚いたことが一つ。
同じ「電動」という均等なアシストを得ているはずなのに、なぜか息子ははるか前方を涼しげに疾走し、私はみるみる置いていかれるんです。
これはマシン性能の差ではない。
乗る人間の肉体がたどった年月の差、シンプルに言えば脚力の衰えなんでしょう。
のどかな亘理の道、「老いては子に従え」という人生の切ない第一章が静かに幕を開けたのか。
いや、息子が頼もしく育ってくれたことへの喜びの方が大きいですね。
最初の目的地である「鳥の海」は、地図で見ると実に不思議な丸い形です。
阿武隈川が何万年もかけて上流からせっせと運んできた砂。
これが太平洋の荒波に押し戻されて堆積、海の一部をせき止めて出来上がった汽水湖なんだそうです。
川の流れと海の荒波による、何万年にもおよぶ壮大な押し問答の末に誕生した、自然界による見事な傑作だなと。
外海は太平洋。
川の流れ込みと荒波がガチンコでぶつかり合うため、岸辺にはダイナミックな白波が立っています。
なるほど、だから「荒浜(あらはま)」という名前なのかと思いきや、実はこれ、歴史を紐解くとそうではないらしいんです。
古い記録によれば、もともとは新しくできた浜として「新浜(あらはま)」と書かれていた。
いつの間にやら、なぜか文字が置き換わって「荒浜」という荒ぶる地名になってしまったそうです。
初々しいデビュー作のような名前が、長い年月のなかでどうしてこうもワイルドに化けてしまったのか。
歴史のいたずらというのは、本当に不思議なものです。
こういうスリリングな波がある場所には、やはり「波乗りの人々(サーファー)」の姿があります。
え〜と、あ、 いたいた。
波の斜面を美しく滑走する姿に見惚れつつも、テトラポットに激突しないのだろうかと、こちらがハラハラしてしまいます。
くれぐれも気をつけて楽しんでくださいね。
鳥の海公園には、大規模なスケートボードの練習場も。
なぜ人間という生き物は、わざわざ荒れ狂う冷たい海や、転べば骨に響くアスファルトの上で、自ら進んで危険を冒すんだろう。
「電動の力で極力汗をかかず、美味しいものを安全に食べる」ことだけに体力と神経を温存している私。
そんな安全第一の美食を目指す身からすると、彼らのストイックなチャレンジ精神は別の惑星から来た人たちに見えてきます。
頼むからケガだけはしないでくれよと、老婆心ながら祈るばかり。
さて、時計を見ればそろそろお昼時。
ここに来た真の目的は、もちろん美味しい海の幸を平らげること。
いよいよ胃袋の戦支度を整えようというところで、この続きはまた次回に。
【おまけのワンポイント】
私がワチャリを借りる際、前で手続きをしていた20代らしき女性は、なんと愛知県碧南(へきなん)市から来られたのだそう。
地元民でもなかなか来ないであろう亘理という土地をどうやって知り、これから電動チャリでどこを巡るつもりなのか。
もしかすると彼女もまた、何とも魅力的な「快楽の設計図」を胸に、我々の想像を超える壮大な旅を実践している『同業者』なのかもしれません。







0 件のコメント:
コメントを投稿