【この記事のポイント】
・鳥の海の復興のシンボル「にぎわい回廊商店街」にて、高級魚ひらめを贅沢にフライにした極上ランチ。
・原価を無視したようなバカでかいフライが3枚、あまりの多さに息子に1枚譲ることに。
鳥の海での待望のランチタイム、向かったのは「荒浜にぎわい回廊商店街」。
荒浜地区は東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた地域だそうで、この「にぎわい回廊商店街」は地元の事業者さんたちが復興を目指して立ち上げた場所なんだそうです。
かつての賑わいを取り戻すための、文字通りの「復興のシンボル」。
ここにある真新しい建物には、港町の活気がぎゅっと凝縮されているようです。
今回暖簾をくぐったのは、『白井商店幸邦丸』。
店頭ではためく「ひらめの天丼」の幟(のぼり)に心を奪われてしまったんです。
メニューを眺めると、最安の煮魚定食でも1,300円。
「なかなかの観光地価格だな…」と思ったものの、ここ港町で食べる海の幸なら間違いはないはず。
その期待感も込みでの入店でした。
店内に一歩入ると、メニューに「(ひらめ)フライ定食 1,700円」の文字を発見。
高級魚であるひらめを、あえてフライにしてしまう。
そんな贅沢な発想、これまで一度も頭をよぎったことがないんです。
よし、今日はこれに決まり。
店の奥のテレビから流れるのどかなニュースを眺めながら、冷水をすすっての待ち時間。
潮の香りがかすかに漂ってくる、こののんびりした待ち時間もまたご馳走です。
旅先でのこういう余白の時間って、なんだか贅沢で気分がいいものですよね。
待つこと15分ほど。
お盆が運ばれてきて、思わず「おぉ…」と声が漏れます。
なんという存在感。
目の前に現れたのは、フライというよりは、もはや「黄金の座布団」が3枚重なっている圧倒的な光景です。
はたして私は、この巨大な塊を一人で完食できるのだろうか。
朝のおにぎり弁当がまだ胃袋に残っている身としては、うれしい悲鳴とともに、珍しく弱気な思いが頭をよぎります。
でも、目の前の香ばしい匂いには抗えず。
よし、それでは頂きましょう。
まずは味噌汁から。
ごく普通のわかめの味噌汁ですけど、これが非常にいい味。
ここまで自転車を漕いできたので喉が乾いているから?
いや、海の近くで、海の恵みをダイレクトに口にしているからでしょう。
磯の深い香りと、じんわり染みる甘みが体中に吸い込まれていく感覚。
これだけでも、わざわざ荒浜まで走ってきた甲斐があったというものです。
さて、いよいよ主役に箸を伸ばします。
持ち上げてみて、さらに驚き。
箸で持ち上げるのが少々大変なくらい重い。
厚みは1.5cm以上、分厚いところでは2cmほどもあるんです。
これならご飯との配分を気にしながらチビチビと齧るような、セコい工夫は一切不要。
ソースを回しかけ、大きな口を開けてガブリといきます。
お〜、これは素晴らしいぞ。
まずはサクッ、と小気味よい音が鼓膜を揺らし、香ばしい油の香りが鼻腔を抜けていきます。
そして間髪入れずに押し寄せる、ひらめの驚くほどフワフワでジューシーな身。
淡白ながらも上品な旨味が口いっぱいに広がり、特製ソースの軽やかな酸味と見事に溶け合っています。
フライなのに重さを全く感じさせず、舌の上でほろりとほどけていくこの食感、ちょっとした感動もの。
これをツヤツヤと輝く炊き立ての白米で追いかける喜び。
ご飯が進みすぎて、箸を動かす手が止まらなくなってしまいます。
う〜ん、なんて贅沢なランチなんだろう。
そもそも、これほど肉厚な高級魚のひらめをフライにすること自体が規格外。
市場で仕入れれば、お刺身用の活け締めひらめはかなりの高値で取引される高級食材です。
都内の割烹でこれだけのボリュームを出そうものなら、3,000円を超えても不思議ではないんじゃないかなと。
漁船を所有する白井商店さんの直接仕入れだからこその逸品、原価を無視したかのような大盤振る舞い。
この一皿には、地元の確かな仕入れ力と、復興への情熱が惜しみなく注ぎ込まれているんですね。
1,700円という値付けは、むしろ安かった。
ケチな私がそう感じるほどの素晴らしい味わいです。
それにしても、このボリュームはやっぱり一人では無理だなと。
よし、向かいに座る息子に1枚あげちゃおう。
息子が食べていたのはアナゴ定食。
丼に乗っているのは煮穴子なのかな、ひらめフライの代わりに少し貰えないかな…
なんていう熱い視線が伝わったのか、息子から一言。
「刺身、1つ食べる?」
え、そっち?
もちろん嬉しい、嬉しいんだけど... 煮穴子は…
おそらくですけど、息子は「親父には軽めのものがいいだろう」と気を遣ってくれたんでしょうね。(ん? もしかして、アナゴを死守したかったか...)
そのせっかくの優しさを無にすることのないよう、ひらめの刺身を1枚ぺろりと。
うん、フライに負けず劣らず。
透き通るような美しい白身を醤油に少し浸して口へ運ぶと、ググッと押し返してくるような見事な弾力。
噛むほどに、上品で濁りのない甘みが口いっぱいに広がっていきます。
フライの濃厚な喜びとはまた異なる、素材そのものの底力の高さを堪能しました。
コスパがいいというのは、安くて美味いだけじゃない。
都内なら普通のランチ+αの値段で、これだけ贅沢なものをお腹いっぱい食べられるのもまた素晴らしいコスパなんだなと。
いや〜美味しかった。
ご馳走さまでした。
【おまけのワンポイント】
ひらめのような高級白身魚は、熱を加えることで身の中の水分が適度に抜け、旨味成分であるアミノ酸が凝縮されます。幸邦丸さんの肉厚なひらめフライは、絶妙な火加減によって「外はサクサク、中はふっくら」の極限状態を作り出し、生の刺身とは全く異なる次元の旨味を引き出していました。高価な食材をあえてフライにするという選択は、魚の旨味を最大限に引き出すための、極めて理にかなった調理法なのかもしれません。
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