【この記事のポイント】
・のどかな競馬の裏で突如として牙を剥いた放馬の恐怖と、驚くべき野生の豹変
・ハプニングの緊迫感が漂う中で繰り広げられた、地響きを立てる甲冑競馬の連続デッドヒート
・騒然とする祭場地を抜け出し、一般公道に馬が佇むシュールな非日常と、その後の静かなる徒歩行軍
予定通り13:00に撤退、観客席から下っている最中のこと。
1頭だけ大きく遅れてスタートし、なんだかやる気なさそうに後方をぽつぽつと走っている馬がいたんです。
武者を背に乗せてはいるものの、闘争心とは無縁のようなのんびりとした足取り。
そののどかな姿を見て、私もすっかり油断していたんですよね。
まさかこの大人しそうな馬がこのあと牙を剥き、会場を大混乱に陥れる暴れ馬に変貌するとは。
この馬が1周して戻ってきた時、ダートで激しい砂煙とともに関係者の怒号が響き渡ります。
落馬。
主人を失った馬に、眠っていた野生のスイッチが入ってしまったんです。
舗装された関係者用通路を、誰も乗せていない茶色い馬が猛然と疾走。
この写真はその直後、慌てて撮った1枚です。
巨大な筋肉の塊が疾走する威圧感と剥き出しの生命力。
さきほどまで保たれていた人間との調和が、一瞬に切り裂かれた瞬間でした。
暫くレースはストップしたものの、我々が観客席を下りきった瞬間。
一時的な混乱を切り裂くように、次のレースが始まります。
競馬のように発走ゲートがあるわけでもなし。
周りの馬と呼吸をあわせ、騎手と馬にしかわからない「何か」をきっかけにスタート。
土煙を巻き上げ、馬群が地響きを立てて。
まだ距離はあるものの、背旗をなびかせた武者たちの一歩も引かない眼光と、前へ前へと突き進む凄まじい圧力がじわじわとこちらへ伝わってきます。
数秒後、眼前のダートを、凄まじい轟音とともに馬たちが爆走してきます。
白馬の武者を中心に、泥を激しく跳ね上げながら競り合うその姿。
風を切り裂き、限界の速度で駆け抜ける人馬一体の躍動感は、言葉を失うほどの圧倒的な力が伝わってくるんですよね。
あ、時計を見れば13:00ジャスト。
ハプニングと興奮の余韻が残る中、我が軍は冷酷に撤退を開始せねばです。
と、出入り口近くで手当されている方に遭遇。
先ほどの馬とぶつかってしまったんでしょうけど…大丈夫かな。
祭場地の外へと出ると、救急車の音。
後で確認したところ、搬送された方も特に命に別状はなかったとのこと。
まずは何よりでした。
さて、道の駅南相馬に向かって歩いていると…
お、馬が道を塞いでいるぞ!
もしかして、先ほど逃げ出した馬?
だとするとヤバいけど… あれ?
冷静になって見てみると、馬具は一切つけておらず。
な〜んだ、全く関係ない馬、トラックに乗り込む前の姿でした。
普通の道路に馬、あまりにもシュールな非現実感。
強烈な時空の歪みを感じさせるの光景に、頭は少々混乱ぎみになったものの…
いかんいかん、今はのんびりしている場合じゃない。
道の駅を目指して、本格的な徒歩行軍に移ります。
騒然とした祭場地が嘘のように、歩みを進めるほどに静寂が戻ってきます。
赤い葉と青い家、右手にはのどかな水田。
のどかでいいですねぇ。
ん?道中に寄り道スポットが出現。
国指定重要文化財「旧武山家住宅」、ひっそりと佇む美しい茅葺き屋根の古民家。
江戸時代の農民の暮らしを今に伝えるこの静かな空間は、車での移動では絶対に見落としていたはずですね。
せっかくだから立ち寄っていくか… いやいや、そうだ。
古民家は非常に魅力的ですけど、我々に課された『13:40道の駅包囲、14:50臨時特別列車への無血乗車』というタイムラインは一分の猶予も許さないんです。
ここで寄り道をすれば、我々は土産物も、浜通りらしい昼食補給の権利もすべて失うことに。
知的好奇心よりも胃袋の満足、要は「花より団子」ですねw
後ろ髪を引かれつつも、中間目標である道の駅での土産確保と昼食補給に向け、わが軍はさらに歩を進めるのでした。
なんてところで、この続きはまた明日。
【おまけのワンポイント】
本来、極めて臆病で社会性の高い草食動物である馬は、群れから孤立することを最も恐れる。1頭がパニックを起こして逃げ出すと、その恐怖が「群れの危機」として一瞬で伝播し、他の馬たちをも巻き込んだ大暴走へ連鎖しかねないんだそう。
そんなパニックトリガーを引きかねない状況下で、残された馬たちを完璧に統率し、何食わぬ顔で次の激しいレースを成立させてしまう武者たちの手綱さばきこそが、実は驚異的な力学的コントロールの賜物なんでしょうね。







0 件のコメント:
コメントを投稿