モーションウィジット

2025年6月23日月曜日

【博物館】犬と猫の古代史、そして江戸時代の身分差は骨格に影響していた?

【この記事のポイント】
・科博特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」レポート続き。今回は人間だけでなく、犬や猫といったペットの古代史、琉球や北海道など地域ごとの人々の多様性、そして身分や生活環境による身体的特徴の差に注目します。



今回の展示は意欲的なものだと感じたのは、人間だけでなくともに暮らしていたペット、特に犬に関する展示が充実していたこと。


縄文時代の貝塚などからは多くの犬の骨が出土しているんだそうで、現代の犬とは遺伝的に異なる集団だったらしいんです。
縄文人は犬を狩猟のパートナーとしてだけでなく、家族の一員としても大切にしていた痕跡が見られ、人間と犬の古くからの絆を感じさせてくれます。


弥生時代になると、大陸から新たな人々や文化と共に、犬も渡来したと考えられているらしい。
弥生時代の犬は縄文時代の犬とは遺伝的に異なる特徴を持ち、より現代の日本犬に近い祖先集団だったようです。

農耕社会となった弥生時代において、犬はどのような役割を果たしていたのか。
集落の番犬として、あるいは引き続き狩猟に用いられたのか。
古代DNAは、こうした彼らの役割の一端も推測する手がかりを与えてくれるんだろうか。


さらに時代は下り、江戸時代の犬の頭蓋骨の展示。

江戸時代には犬は都市部でも一般的に飼われるようになり、様々な犬種や血統が生まれてきたんだそう。現代の日本犬(柴犬や秋田犬など)の直接の祖先にあたる集団も、この時代にその特徴を確立していったと考えられているようです。

古代から江戸時代まで、犬たちが日本列島でどのように人々と共に暮らし、遺伝的に変化してきたのか。
その道のりを辿る展示は、犬好きにはたまらないものでしょう。


猫、比較的新しい同居人




犬に比べて、日本列島における歴史が短いのが猫、いわゆるイエネコです。
イエネコは農耕が始まった頃に穀物を守るために中東で家畜化され、人間の移動と共に世界中に広まっていったとのこと。
日本列島では平安時代以降、愛玩動物としても大切にされるようになたんだとか。

イエネコの古代DNA解析からは、その渡来経路や、日本列島における広がり方などが明らかになりつつあるよう。
犬に比べれば短いとはいえ、猫もまた私たちの歴史に寄り添ってきた存在ですね。


列島の多様性:琉球と北の大地



さて、再び人間に関する展示に戻ってと。
日本列島の人類の道のりは均一ではなく、特に琉球列島と北の大地の人々はそれぞれ独自の歴史を歩んできました。


こちらは琉球列島集団の形成に関する展示。

琉球列島には、縄文時代に本土とは異なるルートで人々が渡来し、独自の文化を築いたと考えられているようです。
本土の弥生人や古墳時代以降の人々との交流もあったものの、遺伝的には本土の日本人とは異なる特徴を比較的長く保持していたんだとか。


琉球では、温暖な気候を利用してイモガイなどを採取し、加工品を製作、それを本土などと交易していた歴史があるそう。
この写真は、そうした交易品に使われた貝の展示です。

こうした貝製品は、琉球の古代民族が高度な加工技術を持ち、広範囲な交易ネットワークを持っていた証拠。
琉球の古代史は、本土の歴史とはまた異なる興味深さを持っています。


北海道に暮らした人々に関する展示。

北海道の縄文人は、本州の縄文人とは少し異なる文化を持ち、特に海獣狩猟を中心とした生活を営んでいた。
この生活スタイルは、本州が弥生時代、古墳時代と変化していく中でも比較的長く続いたんだとか。

北海道に住む人々は、縄文人の遺伝的特徴を強く引き継ぎながら、本州の弥生文化集団や沿海州方面からの集団とも交流を持ち、交易などを続けていたようです。


弥生文化との交流の証拠として、本州の弥生遺跡から琉球の貝製品が見つかったり、北海道の遺跡から本州由来の土器が見つかったりしています。

この写真は、琉球の貝を素材として加工された製品が、本州の遺跡から発掘されたことを示す展示。
こうした交易品の存在は、古代の日本列島内で、地域間の交流範囲が想像以上に広かったことを物語っており非常に面白い。

アイヌ民族は、こうした北海道の縄文人をベースとしながら、本土日本や沿海州の集団からの影響も受けながら形成されていったらしいんですよね。


身分と身長、DNAが語る格差?



展示はさらに進み、より近代に近い時代、江戸時代の展示へと変わります。


これは江戸時代の頭蓋骨の解説。
複数の頭蓋計測値を統計処理したところ、身分によって頭蓋の形が大きく異なっていることが分かったそうです。

曰く、町人の頭蓋骨が中世の日本人集団に近い特徴を示すのに対し、武家の頭蓋骨はより現代的な日本人集団に近い特徴があるらしい。
これは身分による生活習慣や食生活の違いが影響しているとのことですけど、同じ時代、同じ地域に住んでいても、そんなにも違うものなのかというのに驚き。


町人と武家の人面復元模型が並ぶ展示。
首と頭蓋骨が並ぶ様は、見る人によっては少し不気味に感じるでしょう。

こうして並べて比較してみると、先ほどの解説にあるほど見た目にそこまで決定的な大きな違いがあるようには見えない気も。
まぁリアルな生首のような不気味さ、髪型の違いが差異を覆い隠しているのかもしれないですね。


最後にあったのは、日本列島人の身長の変遷を示す展示。

当然ながら現代人が最も平均身長が高いものの、興味深いのは古墳時代よりも鎌倉・江戸時代の方が身長が低いこと。
さらにこれらの時代は、縄文時代よりも若干低いというデータが示されています。

同じ日本人集団でも、食生活、栄養状態、労働環境、疫病の流行など、その時代ごとの生活環境によって、平均身長は大きく変動するものなんですね。
骨格分析からは、こうした身体的な特徴の変遷も読み取れるというのは凄い。

展示を一通り見終えると、脳が刺激され知識欲が満たされる、充実した時間。
頭を使うと腹も空いてくるもので、さて、ランチにしようかというところで、続きはまた明日。




【おまけのワンポイント】
・特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」は、7/19〜9/23に名古屋市科学館で展示されるとのこと。東京で見逃した方は、ちょっと名古屋に足を伸ばして、というのも面白いですね。

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