・『文京ふるさと歴史館』探訪の後編。江戸時代の商家や武家屋敷、そして小石川養生所など、歴史ドラマでお馴染みの舞台のリアルな姿に触れます。菊人形の生首に肝を冷やしつつも、文京区が「文の京」と呼ばれるに至った、多くの文人たちの足跡を辿ります。
昨日に引き続き、『文京ふるさと歴史館』の探訪レポート。
1Fは通史を網羅する流れでしたけど、2階は江戸時代以降の文化についての展示でした。
江戸の暮らしと、武家の街
ん? この「本郷カネヤス」という名前、なんか聞き覚えがあるな…
ネットで調べてみると、「本郷もかねやすまでは江戸の内」。
あ、これだ、本郷三丁目にあったお店のことですね。
享保年間(1716~1736)に歯医者の兼康祐悦が乳香散という歯磨き粉を売り出し、これが当たって店が繁盛していたんだそう。
当時は砂糖が貴重品、なので虫歯になる人は少なかったようですけど、ひとたび虫歯になるとその治療法は「抜く」か「焼く」か。
麻酔もない時代、その痛みは想像を絶しますね。
文京区は江戸城に近い高台、この立地で多くの武家屋敷、特に大名の上屋敷が置かれていたんだとか。
加賀前田家や水戸徳川家といった、幕府の中でも特に有力な大名たちが広大な屋敷を構えていたんです。
現在の東京大学本郷キャンパスは、かつての加賀藩上屋敷跡地だというのは有名な話。
時代劇ファンにはお馴染みの「小石川養生所」。
八代将軍・徳川吉宗が、貧しい人々のために設置した無料の医療施設です。
現在の東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)の中に、その井戸の跡が残っているんだそう。
近代の文化と、信仰の形
えぇと、次は「近代の娯楽と風俗」のコーナーか…
おぉっと!
今度は生首が転がっていて、心臓が跳ね上がります。
よく見れば、これは菊人形の頭。
本物よりは少々小ぶりではあるものの、この形状のものが床に置いてあるというのは心臓によろしくない。
湯島天神(湯島神社)では、菊人形展が名物として大変な人気を博していたんだそう。
今日でも11月に開催されており、私も一度観たことがあります。
菊の花や葉で飾り付けた等身大の人形は、歴史上の人物や物語の登場人物。
江戸から続く庶民の娯楽、その精巧な技術はまさに職人技。
「文の京」たる所以
この建物、今日では「湯島聖堂」として知られる「昌平黌(しょうへいこう)」。
五代将軍・徳川綱吉によって建てられた学問所で、孔子廟を起源とした江戸幕府直轄の施設。
近代日本の教育の礎を築いた、まさに「学問の中心地」。
「文京区」という区名。
これは昭和22年、旧小石川区と旧本郷区が合併する際に、小石川区役所の職員が提案した名称だそうです。
この地には、夏目漱石、森鴎外、樋口一葉、石川啄木など数えきれないほどの文人たちが居を構え、多くの名作を生み出してきています。
まさに「文(ふみ)の京(みやこ)」と呼ぶにふさわしい、豊かな歴史と文化が息づいているんですね。
最後に
というわけで、2日間にわたってお届けした『文京ふるさと歴史館』。
先史時代から近代に至るまで、この土地に刻まれた幾重もの歴史のレイヤーを効率的に巡る経験になりました。
明暦の大火の謎、弥生式土器発見の地、そして多くの文人たちの息遣い。
普段何気なく歩いている街も、その歴史を知ることで、全く違った風景に見えてくる。
博物館巡りって面白いものですね。
【おまけのワンポイント】
・文京区には、今回紹介した文人たちの旧居跡や記念館が数多く点在しています。「文京区立森鴎外記念館」や、漱石が晩年を過ごした「漱石山房記念館」などを巡る文学散歩も、好きな方にはたまらないでしょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿